この記事の要点
- 【結論】RAG・エージェント・MCP・A2A・ベクトルDB・運用の6カテゴリ40語を、実務家が現場で使う定義と用例で整理した。
- 【重要ポイント1】RAG関連用語は「検索→分割→埋め込み→再ランク」の4ステップで全体像を掴める。
- 【重要ポイント2】MCPは2024年11月にAnthropicが公開したオープン標準で、AIアプリと外部データを結ぶ「USB-C型」の共通規格である。
- 【重要ポイント3】A2Aは複数エージェントが役割分担して協働する設計思想で、Handoff・Delegation・Orchestratorの3概念で成立する。
- 【対象読者】経営者・事業責任者・AI開発責任者・DXコンサルタント。
目次
- RAG基礎用語の全体像とは何か?
- ベクトルDBの主要製品とアルゴリズム用語は何か?
- エージェント設計で使われる用語は何か?
- MCPを理解する上で必須の用語は何か?
- A2Aマルチエージェント協働の用語は何か?
- AI運用・ガバナンス用語は何か?
- FAQ
- 参考文献・出典
用語一覧表(40語の全体マップ)
| カテゴリ | 主要用語 |
|---|---|
| RAG基礎(7語) | Retrieval/Chunking/Embedding/Reranker/Hybrid Search/Query Expansion/Context Window |
| ベクトルDB(7語) | Pinecone/Weaviate/Milvus/pgvector/HNSW/ANN/Cosine Similarity |
| エージェント設計(7語) | Planning/Reflection/Tool-use/ReAct/Chain-of-Thought/Function Calling/Memory |
| MCP(7語) | MCP/MCP Server/MCP Client/Resource/Tool/Prompt/Sampling |
| A2A(6語) | Agent-to-Agent/Handoff/Delegation/Orchestrator/Swarm/Supervisor |
| 運用(6語) | Observability/Guardrails/Evals/LLM-as-Judge/Prompt Injection/RLHF |
RAG基礎用語の全体像とは何か?
結論: RAGは「Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」の略で、LLMに外部ナレッジを検索させてから回答生成させる仕組みです。
Retrieval(検索)
Retrievalとは、ユーザー質問に関連する情報を外部データソースから取り出す工程である。 ベクトル類似度・キーワード・グラフ探索の3手法が主流。使用例:「社内文書10万件からRetrievalで上位20件を抽出し、LLMに渡して回答生成する」。
Chunking(チャンキング)
Chunkingとは、長文ドキュメントを検索単位となる小さな塊に分割する処理である。 一般に300〜1,000トークンで区切る。使用例:「PDF200ページを800トークン単位でChunkingし、5,000チャンクを生成」。
Embedding(埋め込み)
Embeddingとは、テキストを数百〜数千次元のベクトルに変換する技術である。 OpenAI text-embedding-3、Cohere embed-v3、Voyage AIが主要。使用例:「Embedding APIで各チャンクを1,536次元ベクトルに変換しベクトルDBへ格納」。
Reranker(リランカー)
Rerankerとは、検索で取得した候補文書を再度精緻に並び替えるモデルである。 Cohere Rerank、BGE Rerankerが代表例。使用例:「Retrieval上位50件をRerankerで再評価し、上位5件のみLLMへ渡す」。
Hybrid Search(ハイブリッド検索)
Hybrid Searchとは、ベクトル検索とキーワード検索(BM25)を組み合わせる手法である。 使用例:「製品型番はBM25、概念質問はベクトル検索と、Hybrid Searchで両立させ再現率+15%」。
Query Expansion(クエリ拡張)
Query Expansionとは、ユーザー質問を検索前に言い換えたり分解する前処理である。 HyDE、Multi-Queryが代表手法。使用例:「あいまい質問をLLMで3種類に言い換え、再現率を+18%改善」。
Context Window(コンテキストウィンドウ)
Context Windowとは、LLMが一度に処理できる入力トークンの上限である。 Claude Sonnet 4は200Kトークン、Gemini 2.5 Proは200万トークン。使用例:「Retrieval結果を上位10件・8,000トークンに制限」。
ベクトルDBの主要製品とアルゴリズム用語は何か?
結論: ベクトルDBは埋め込みベクトルの近傍検索に特化したデータストアです。主要製品4つとコアアルゴリズム3語を押さえます。
主要製品比較表
| 製品 | 提供形態 | 特徴 |
|---|---|---|
| Pinecone | 完全マネージド | 運用不要・SaaS。エンタープライズ向け |
| Weaviate | OSS+SaaS | GraphQL対応・モジュール豊富 |
| Milvus | OSS | 大規模データに強い・Zilliz提供 |
| pgvector | PostgreSQL拡張 | 既存DBに追加可能・低コスト |
Pinecone
Pineconeとは、完全マネージド型のベクトルデータベースSaaSである。 インフラ運用不要で数十億ベクトル規模までスケール可能。使用例:「本番RAGをPineconeのs1ポッドで運用し、月額数百ドルで50万文書を管理」。
Weaviate
Weaviateとは、GraphQL APIを備えたOSSベクトルDBである。 テキスト・画像・音声のマルチモーダル検索に対応。使用例:「社内ナレッジと製品画像を同一Weaviate基盤で検索」。
Milvus
Milvusとは、大規模ベクトル検索に特化したOSSデータベースである。 10億件超のスケーラビリティを持つ。使用例:「eコマース商品5,000万件をMilvusで管理し、検索遅延を80ms以下に維持」。
pgvector
pgvectorとは、PostgreSQLにベクトル型と類似検索機能を追加する拡張である。 既存RDBインフラで運用可能。使用例:「既存Postgresにpgvectorを追加し、10万文書のRAG基盤を1週間で構築」。
HNSW
HNSWとは、階層的グラフ構造で高速な近似最近傍探索を実現するアルゴリズムである。 主要ベクトルDBの標準インデックスとして採用。使用例:「M=16、efConstruction=200で100ms以内の検索を実現」。
ANN(Approximate Nearest Neighbor)
ANNとは、厳密解ではなく近似的に最近傍ベクトルを探索するアルゴリズム総称である。 使用例:「厳密検索は数秒かかるが、ANNなら数十msで99%再現率を確保」。
Cosine Similarity(コサイン類似度)
Cosine Similarityとは、2つのベクトルのなす角度で類似度を測る指標である。 値は-1〜1で1に近いほど類似。使用例:「0.85以上のチャンクのみをLLMに渡すしきい値設計にした」。
エージェント設計で使われる用語は何か?
結論: LLMエージェントは「Plan→Act→Reflect」のループで動きます。設計7用語を整理します。
Planning(計画)
Planningとは、エージェントが目標達成のための手順を事前に立てる能力である。 ReWOO、Plan-and-Solve等の手法がある。使用例:「複雑な調査を5ステップに分解してから逐次実行する設計にした」。
Reflection(内省)
Reflectionとは、エージェントが自らの出力を振り返り誤りを検出・修正する仕組みである。 Reflexion、Self-Refineが代表。使用例:「コード生成後にテスト失敗を検知し自動修正するループを導入」。
Tool-use(ツール利用)
Tool-useとは、LLMが外部関数・API・データベースを呼び出す能力である。 使用例:「Tool-useで社内DB検索・Slack投稿・カレンダー予約を1つのエージェントに統合」。
ReAct
ReActとは、推論(Reason)と行動(Act)を交互に繰り返すエージェント設計パターンである。 2022年Yaoらの論文で提案。使用例:「調査エージェントをReAct形式で構築し、思考ログをユーザーに提示」。
Chain-of-Thought(CoT)
Chain-of-Thoughtとは、LLMに段階的推論を明示させて精度を上げるプロンプト手法である。 使用例:「数値計算タスクでCoTを導入し、正答率を62%から89%に改善」。
Function Calling(関数呼び出し)
Function Callingとは、LLMが構造化された引数付きで外部関数を呼び出す機能である。 OpenAI・Anthropic・Google全社が標準対応。使用例:「get_weather(city=’東京’)の形式でAPIを叩けるようスキーマ定義」。
Memory(メモリ)
Memoryとは、エージェントが会話履歴や過去の学習内容を保持・参照する仕組みである。 Short-termとLong-termに分かれる。使用例:「顧客対応エージェントにLong-term Memoryを追加し、過去問い合わせを踏まえた応答を実現」。
MCPを理解する上で必須の用語は何か?
結論: MCP(Model Context Protocol)はAnthropicが2024年11月に公開したオープン標準で、AIアプリと外部データ・ツールを結ぶ共通インターフェースです。
MCP(Model Context Protocol)
MCPとは、AIアプリと外部データソース・ツールを標準化した方法で接続するオープンプロトコルである。 JSON-RPC 2.0ベースで2024年11月に公開。使用例:「MCP採用で社内3つのAIアプリが同一のGoogle Drive Serverを共有可能に」。
MCP Server
MCP Serverとは、データやツールをMCPプロトコルで外部提供するプログラムである。 GitHub、Slack、Google Drive等の公式・OSS実装が100種類以上。使用例:「Notion MCP Serverを起動しClaude Desktopから社内文書を直接検索」。
MCP Client
MCP Clientとは、MCP Serverに接続してリソースやツールを利用するAIアプリ側の実装である。 Claude Desktop、Cursor、Cline等が対応。使用例:「Cursorから複数のMCP Serverを同時接続し、コード補完・ファイル操作・DB検索を一元化」。
Resource(リソース)
Resourceとは、MCP Serverが提供する読み取り可能なデータ実体である。 ファイル、DBレコード、API応答等が該当。使用例:「社内WikiのページをResourceとして公開し、LLMがURI経由で参照できる仕組みを構築」。
Tool(ツール)
Toolとは、MCP Serverが提供する実行可能な関数である。 LLMから呼び出される。使用例:「create_jira_ticketというToolを公開し、Claudeがチャットからチケット起票できるように」。
Prompt(プロンプト)
Prompt(MCPの文脈)とは、MCP Serverが提供する再利用可能なプロンプトテンプレートである。 使用例:「週次レポート整形Promptを共通Serverで配信し、全社員のClaude利用体験を統一」。
Sampling
Samplingとは、MCP Serverが逆にClient側のLLMを呼び出せる機能である。 使用例:「Samplingを使いDB検索結果をServer側で要約してからClientに返す構成を実装」。
A2Aマルチエージェント協働の用語は何か?
結論: A2A(Agent-to-Agent)は複数エージェントが役割分担して協働する設計思想です。Google・Anthropic・LangChainが2025年に相次いで枠組みを公開しました。
Agent-to-Agent(A2A)
A2Aとは、複数AIエージェントが相互に通信・協働するアーキテクチャの総称である。 Googleが2025年にA2A Protocolを提唱。使用例:「営業エージェントと分析エージェントをA2Aで連携させ、商談準備を自動化」。
Handoff(ハンドオフ)
Handoffとは、あるエージェントが処理を別エージェントに引き継ぐ動作である。 OpenAI Swarm、LangGraphが標準提供。使用例:「一次対応が専門質問を受けた際、Handoffで技術専門エージェントへ移譲」。
Delegation(委譲)
Delegationとは、上位エージェントが下位エージェントにサブタスクを割り当てる関係性である。 使用例:「調査タスクを3つのSub-agentにDelegationし、並列実行で処理時間を1/3に短縮」。
Orchestrator(オーケストレーター)
Orchestratorとは、複数エージェント全体の実行順序・分配を統括する制御役である。 LangGraphのSupervisor、CrewAIのProcessが代表実装。使用例:「Orchestratorが4つの専門エージェントを状況に応じて呼び分ける動的ルーティングを構築」。
Swarm(スウォーム)
Swarmとは、対等な複数エージェントが自律的に協調するアーキテクチャである。 OpenAIがOSSフレームワークを公開。使用例:「顧客対応・営業・技術の3エージェントをSwarmで構成」。
Supervisor(スーパーバイザー)
Supervisorとは、複数のWorkerエージェントを監督・指示する上位エージェントである。 使用例:「LangGraphでSupervisor→Researcher/Writer/Reviewerの3層構造を設計」。
AI運用・ガバナンス用語は何か?
結論: AI本番運用には「観測・防御・評価」の3本柱が必要です。運用6用語を押さえます。
Observability(オブザーバビリティ)
Observabilityとは、LLMアプリの入出力・遅延・コストをトレース可視化する仕組みである。 LangSmith、Langfuse、Arizeが代表。使用例:「LangSmithで全プロンプトログを保存し、失敗パターンを発見・改善」。
Guardrails(ガードレール)
Guardrailsとは、LLMの入出力を制約し、有害・機密情報の流出を防ぐ仕組みである。 NVIDIA NeMo Guardrails等がある。使用例:「個人情報検出・出力形式検証を実装しコンプライアンス基準を満たした」。
Evals(評価)
Evalsとは、LLMやエージェントの出力品質を体系的に測定する仕組みである。 OpenAI Evals、DeepEval等のフレームワークがある。使用例:「本番前に200件のテストケースをEvalsで自動評価しリグレッションを検知」。
LLM-as-Judge
LLM-as-Judgeとは、別のLLMを審査官として使い出力品質を評価する手法である。 人手評価より安価で大量スケール可能。使用例:「ClaudeでGPT-4がA/Bテスト判定に5段階採点」。
Prompt Injection(プロンプトインジェクション)
Prompt Injectionとは、悪意ある入力でLLMの指示を上書き・逸脱させる攻撃である。 OWASP LLM Top 10の第1位。使用例:「外部ページ取り込み時にサニタイズと二重確認Guardrailsを導入」。
RLHF
RLHFとは、人間のフィードバックを報酬信号に用いてLLMをファインチューニングする手法である。 ChatGPT・Claude等の学習に採用された基盤技術。使用例:「社内向けモデルにRLHFを施し、専門用語の正確性を+22%改善」。
FAQ(よくある質問)
Q1:RAGとファインチューニング、どちらを選ぶべきですか?
A1:頻繁に更新される社内知識の参照はRAG、話し方や独自の振る舞い学習はファインチューニングが適します。RAGはコストも1/10以下に収まり、まず着手する選択肢として推奨します。両者の併用が2026年時点のベストプラクティスです。
Q2:MCPとFunction Callingはどう違いますか?
A2:Function Callingは1つのLLM呼び出し内での関数呼び出しであり、MCPはベンダー横断のオープン標準です。「一度サーバーを作れば全AIアプリで再利用できる」点が根本的な違いで、社内AI基盤の再利用性が飛躍的に高まります。
Q3:ベクトルDBは自社開発すべきですか、SaaSを使うべきですか?
A3:10万件未満・PoC段階ならpgvectorが最速で低コスト、100万件以上・本番運用ならPineconeやWeaviate Cloud等のマネージド利用が推奨です。運用工数を内製する余力がなければSaaS一択です。
Q4:エージェントの信頼性を高めるには何から始めるべきですか?
A4:Observabilityでトレースを取り、Evalsでテストケースを100〜300件用意し、Guardrailsで最低限の入出力制約をかける、の3点が起点です。運用が回り始めてからLLM-as-JudgeやReflectionを追加すると効果的です。
Q5:MCPとA2Aは競合しますか?補完関係ですか?
A5:補完関係です。MCPはAIアプリと「データ・ツール」を接続する規格、A2AはAIエージェント同士を接続する枠組みで、レイヤーが異なります。実務では、各エージェントがMCP経由でデータを扱いA2Aで相互連携する構成が標準になりつつあります。
参考文献・出典
- Anthropic「Introducing the Model Context Protocol」(2024年11月)URL: https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol
- Anthropic「MCP Specification」公式ドキュメント URL: https://modelcontextprotocol.io/
- LangChain公式ドキュメント「LangGraph Multi-Agent Systems」URL: https://langchain-ai.github.io/langgraph/
- LlamaIndex公式ドキュメント「Advanced RAG」URL: https://docs.llamaindex.ai/
- OpenAI「Swarm: An educational framework for multi-agent orchestration」(2024)
- Google「Agent-to-Agent (A2A) Protocol」(2025年発表)
- 経済産業省「デジタルスキル標準(DSS)」(2024年改訂版)URL: https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/dss/
- IPA「DX白書」(2026年版)
- OWASP「Top 10 for LLM Applications 2025」
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この記事を書いた著者
Ballista Inc. 編集部
監修:中川貴登(Ballista代表取締役)
コンサルティングファーム・IT企業でのAI開発・育成体系構築の実務経験を元に執筆。国内外のRAG・MCP・エージェント導入プロジェクトの支援経験を踏まえ整理した。
ConStepについて
ConStepはAI時代の上流人材育成プラットフォームです。コンサル業界の上流スキル(業務分析・課題解決・クライアントワーク)をDSS準拠体系でIT企業・事業会社の人材育成に転用。RAG・MCP・エージェント設計等のAI実装スキルを、業務×AI×実装のFDE型人材として統合的に育成します。
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