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DSS(デジタルスキル標準)×コンサルスキル:相乗効果の設計

目次

概要

経産省が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」と、マッキンゼーやBCGなどコンサル業界が磨いてきた上流スキルは、本質的に多くが重なります。にもかかわらず、両者は別物として議論されることが多いのが実情です。本稿では、DSSとコンサルスキルの重なりと違いを構造化し、両者を組み合わせて相乗効果を出す育成設計のあり方を整理します。

DSSとコンサルスキル、それぞれの輪郭

まず両者の輪郭を確認します。

経産省「デジタルスキル標準(DSS)」は、2022年12月に策定され、2023年8月にver.1.1に改訂された人材標準です。「DXリテラシー標準(DSS-L)」と「DX推進スキル標準(DSS-P)」の2層構造を持ち、後者は5つの人材類型(ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ)でスキルを定義しています。

一方、コンサル業界が体系化してきたスキルは、「論点設計」「構造化」「ステークホルダーマネジメント」「ピラミッドストラクチャー」「So Whatの抽出」「クライアントワーク」などです。これらは公的標準ではないものの、業界横断で共有された型として確立しています。

両者は別の文脈で発展してきましたが、AI時代において求められる人材像という観点で交差します。

DSSのBAスキルとコンサルスキルの重なり

経産省DSSのビジネスアーキテクト(BA)には13のスキル項目があります。これとコンサルスキルの対応関係を整理します。

DSSのBAスキル対応するコンサルスキル
ビジネス戦略策定・実行戦略策定、論点設計、KPI設計
プロジェクトマネジメントプロジェクト推進、ワークプラン設計
ビジネスモデル設計ビジネスモデル分析、収益構造設計
ビジネス調査市場調査、競合分析、Desk Research
システムズエンジニアリング基礎(重なり弱い)
ビジネスアナリシス業務フロー分析、As-Is/To-Be分析
要求分析クライアント要求の構造化、論点抽出
プロセス設計・導入プロセスマッピング、業務再設計
変革リーダーシップチェンジマネジメント、組織変革
顧客・ユーザーへの共感クライアント理解、共感的傾聴
コラボレーションチームワーク、クライアントワーク
概念化能力構造化、ピラミッドストラクチャー
適応力(学び続ける力)継続学習、振り返り

13スキル中12スキルが、コンサルスキルと対応関係を持ちます。「システムズエンジニアリング基礎」だけが純粋に技術寄りです。DSSのBAは、コンサルスキルをデジタル文脈に翻訳したものと言えます。

両者の違い——どこが異なるか

重なりが大きい一方、両者には明確な違いもあります。違いを認識することで、相乗効果の設計が明確になります。

違い1:標準化の程度

DSSは公的標準として、評価指標まで含めて整理されています。一方コンサルスキルは、各ファーム内の OJT・徒弟制度で受け継がれ、外部化された標準は限定的です。標準化の点ではDSSが進んでいます。

違い2:技術接続の明示性

DSSは「システムズエンジニアリング基礎」を含み、技術側との接続を明示しています。コンサルスキルは技術接続が暗黙的で、ファーム・個人によってばらつきがあります。技術接続の明示性ではDSSが優位です。

違い3:実践型化の深さ

コンサルスキルは数十年の実案件を通じて「型」として磨かれており、特に論点設計・構造化の深さは群を抜きます。DSSは標準としては優れていますが、実践型化の深さではコンサルスキルが優位です。

違い4:適応領域

DSSは全産業・全業種のDX人材を想定しています。コンサルスキルは特定クライアントの問題解決を起点に発展しました。普遍性と固有性、それぞれに強みがあります。

相乗効果を出す育成設計の4原則

両者の重なりと違いを踏まえると、相乗効果を出す育成設計には4つの原則があります。

原則1:DSSをスキルマップの骨格に使う

公的標準であるDSSを、自社のスキルマップの骨格として採用します。13スキル項目を、社員の評価軸・育成計画・キャリアパスに組み込みます。経産省・IPAが提供するスキル定義をそのまま使えるため、社内合意形成のコストが下がります。

原則2:コンサルスキルで実践の型を埋める

DSSはスキル項目を示しますが、「どうやって身につけるか」の型は限定的です。ここにコンサル流の型(論点ツリー、ピラミッドストラクチャー、So Whatの3点セット、ワークプラン作成法など)を流し込みます。スキル項目とトレーニング方法を、DSS×コンサルの組み合わせで設計します。

原則3:AI軸を上乗せする

DSSもコンサルスキルも、生成AIによる業務変革が織り込まれる前の枠組みです。AI軸(プロンプト設計、AIエージェント設計、AI能力範囲の解像度)を、追加スキルとして上乗せします。

原則4:実案件で統合させる

座学だけでは、DSSとコンサルスキルとAI軸は統合されません。社内DX案件や顧客向けプロジェクトを通じて、3者を実地で統合する経験を積ませます。

育成プログラムの構成例

実際の育成プログラムを設計するなら、以下の構成が現実的です。期間は6〜12ヶ月を想定します。

Phase 1:DSSスキルマップによる現状把握(1ヶ月)

社員の現在のスキルを、DSSのBA 13スキルで自己評価+上司評価します。スキルマップを可視化し、伸ばす方向を合意します。

Phase 2:コンサル流の型を学ぶ(2ヶ月)

論点ツリー、ピラミッドストラクチャー、構造化、要求分析、ステークホルダーマップなどを、演習中心で学びます。コンサル業界の標準教材を活用します。

Phase 3:AI軸を上乗せする(1ヶ月)

生成AI・AIエージェントを実機で触りながら、業務への適用設計を学びます。プロンプト設計、AIモデルの選定、人とAIの分業ラインを習得します。

Phase 4:実案件で統合する(3-6ヶ月)

小規模な社内DX案件、または顧客向けプロジェクトの上流工程にアサインします。DSSスキル・コンサルスキル・AI軸の3者を、実地で統合させます。

Phase 5:振り返りと型化(継続)

案件ごとに「何が機能し、何が機能しなかったか」を言語化し、次の案件に活かす習慣を組織に組み込みます。

まとめ

経産省DSSとコンサルスキルは、AI時代の上流人材育成において相補的な関係にあります。DSSは公的標準としての網羅性・標準化の強みを持ち、コンサルスキルは実践型化の深さを持ちます。両者を組み合わせ、さらにAI軸を上乗せすることで、AI時代の上流人材育成の加速が期待できます。育成責任者は、DSSをスキルマップの骨格に、コンサルスキルを実践の型に、AI軸を時代対応の上乗せに——この3層構造で設計を進めるべきです。


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