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経産省DX人材5職種の違い|BA・DS・DD・SE・CSの役割分担と人材ポートフォリオ設計

経済産業省「デジタルスキル標準(DSS)」のDX推進スキル標準は、DX推進専門人材を複数の類型に分類しています。本記事では、ビジネスアーキテクト(BA)、データサイエンティスト(DS)、デザイナー(DD)、ソフトウェアエンジニア(SE)、サイバーセキュリティ(CS)の5職種の役割分担と関係性を整理し、ver2.0改訂で新設されたデータマネジメント(DM)類型を含む6類型の全体像を解説します。自社の人材ポートフォリオ設計、採用計画、育成順序の判断軸として活用できる構成です。

目次

この記事の要点

  • DSSのDX推進スキル標準は、ver1.0で5類型(BA・DS・DD・SE・CS)、ver2.0で6類型(5類型+データマネジメントDM)を定義しています。
  • 5職種は対立関係ではなく補完関係にあり、DXプロジェクトでは「BAが事業シナリオを設計し、DD・DS・SE・CSが専門領域で支える」という連携構造が標準的です。
  • 自社の人材ポートフォリオ設計は、DXフェーズ・事業戦略・既存人材構成の3観点で、5職種の比率を判断します。
  • BA人材の不足が、多くの企業で「DX推進の最大ボトルネック」となっており、技術系職種の採用先行ではなくBA育成先行の人材戦略が推奨されます。
  • ver2.0で新設されたデータマネジメント類型は、DSとは異なるロールであり、データ活用本格化を目指す企業は別途確保が必要となります。

DSSの人材類型構造

経産省DSSのDX推進スキル標準が定義する人材類型を、ver1.0およびver2.0で整理します。

ver1.0:5類型(BA・DS・DD・SE・CS)

ver1.0では、DX推進専門人材として以下の5類型が定義されました。

類型略称主な役割
ビジネスアーキテクトBADXの目的設定、関係者コーディネート、目的実現のリード
データサイエンティストDSデータを活用した業務変革・新規ビジネスの実現
デザイナーDD顧客・ユーザー視点での製品・サービス方針開発と方向性デザイン
ソフトウェアエンジニアSEDXに必要な製品・サービスのシステム・ソフトウェア設計・実装
サイバーセキュリティCS業務プロセスを支えるデジタル環境のセキュリティリスク管理

ver2.0:6類型(5類型+DM)

ver2.0では、これら5類型に加えてデータマネジメント類型が新設され、6類型に拡張されました。

類型略称追加された背景
データマネジメントDMデータ基盤整備・データガバナンス・データ品質管理の重要性増大

DM類型の新設は、「データサイエンティストを増やしてもデータが使える状態になっていない」という多くの企業の実情を反映したものです。DSが「データの分析と活用」を担うのに対し、DMは「データの整備と維持」を担う、という役割分担が明確化されました。


5職種の役割分担と関係性

5職種は対立関係ではなく補完関係にあり、DXプロジェクトの推進には複数職種の連携が不可欠です。各職種の役割と、相互の関係性を整理します。

BA(ビジネスアーキテクト)の役割

BAは、DXプロジェクトにおける「事業変革のシナリオ策定と推進」を担います。経営戦略を踏まえた変革テーマ設定、関係部門の調整、KPIモニタリング、施策の軌道修正までを統括するロールです。ver2.0改訂後はロール定義が精緻化され、新規事業開発/既存事業変革/社内DX推進/DX組織立ち上げの4分類で展開されます。

BAは、DD・DS・SE・CSが提供する専門能力を統合し、事業価値として実現させる「指揮者」のような役割を担います。

DS(データサイエンティスト)の役割

DSは、データを統計・機械学習等で解析し、事業判断や新規ビジネス創出に活用する人材です。具体的には、業務データの予測モデル構築、顧客行動分析、需要予測、価格最適化、AIモデル開発などを担います。

DSが効果を発揮するためには、BAが設計した事業シナリオの中でデータ活用の論点が明確化されていること、DM(データマネジメント)が整備したデータ基盤が機能していることが前提となります。

DD(デザイナー)の役割

DDは、顧客・ユーザー視点での製品・サービス設計を担います。ver1.0ではUI/UXデザイン中心の定義でしたが、ver2.0改訂で「サービスデザイン」「事業デザイン」まで含む幅広い定義へ拡張されました。

DDは、BAが設計した事業シナリオの「顧客価値の具現化」を担当します。SEと連携してプロダクト開発の上流設計を、DSと連携してデータ駆動の体験設計を担う場面が増えています。

SE(ソフトウェアエンジニア)の役割

SEは、DXに必要な製品・サービスのシステム・ソフトウェア設計・実装を担います。アプリケーション開発、システム統合、クラウド基盤構築、API開発、ver2.0では生成AI APIの実装・AIエージェント開発も含まれます。

SEは、BA・DDが設計した要件を実装に落とし込み、DSが構築したモデルを本番環境で動かす責任を持ちます。CSと連携してセキュアな実装を担う場面も多くあります。

CS(サイバーセキュリティ)の役割

CSは、業務プロセスを支えるデジタル環境におけるセキュリティリスクの管理を担います。脆弱性管理、インシデント対応、セキュリティポリシー策定、ver2.0では生成AIに関するセキュリティリスク管理・AIガバナンスも含まれます。

CSは、BAが設計する変革シナリオの「リスク許容範囲」を制約条件として提示し、SEの実装段階でセキュリティ要件を組み込む役割を担います。

5職種の連携構造

DXプロジェクトでの5職種連携は、以下のような構造で展開されます。

[経営戦略・事業戦略]
       ↓
[BA: 事業変革シナリオ策定]
       ↓
[DD: 顧客価値設計] ←→ [DS: データ活用設計] ←→ [SE: システム実装設計]
       ↓                    ↓                       ↓
                  [CS: セキュリティ要件]
                            ↓
                    [推進・運用]
                            ↑
                    [BA: KPIモニタリング、軌道修正]

BAが「上流の指揮者」、DD・DS・SE・CSが「専門領域の実行者」という役割分担です。


自社人材ポートフォリオ設計の判断軸

DX推進のための人材ポートフォリオを、自社で設計する際の判断軸を整理します。

判断軸1:自社のDXフェーズ

デジタイゼーション段階(データのデジタル化)では、SEとDM(ver2.0)の優先度が高くなります。デジタライゼーション段階(業務プロセスのデジタル化)では、BAとSEとCSの連携が重視されます。デジタルトランスフォーメーション段階(顧客への提供価値創出)では、BA・DD・DSのバランスが鍵となります。

判断軸2:自社の事業戦略

新規事業創出を重視する企業は、BAとDDの確保を優先します。既存事業変革を重視する企業は、BAとSEの連携を優先します。データドリブン経営を重視する企業は、BAとDSとDMの三位一体を優先します。プラットフォーム事業を重視する企業は、SEとCSの厚みを優先します。

判断軸3:既存人材構成

既存のIT部門・データ分析部門・企画部門の人員構成を踏まえ、不足職種を補強する設計が現実的です。多くの大企業では、SE・DSは既存IT部門・情報システム部門の人材を活用可能な一方、BA・DD・DMの確保が課題となります。

人材ポートフォリオ比率の標準値

大企業のDX推進組織(100名規模)の場合、5職種(+DM)の標準的比率は以下となります。

職種標準比率役割
BA20〜30%事業シナリオ策定・推進の中核
DD10〜15%顧客価値設計
DS15〜25%データ活用・AI活用
DM(ver2.0)10〜15%データ基盤整備
SE20〜30%システム実装
CS5〜10%セキュリティ管理

ただし、自社のDXフェーズと事業戦略により大きく変動します。


ROI/効果:人材ポートフォリオ設計の経済合理性

5職種(+DM)の人材ポートフォリオ設計は、DXプロジェクトのROIに直接影響します。

BAの不足が「DX投資の浪費」を生む構造

多くの企業で、DS・SE・CSの採用を先行させ、BAの確保を後回しにする失敗パターンが観察されます。この構造の問題は、DS・SE・CSが個別の専門業務を担うものの、「事業価値として統合する役割」が不在のため、各専門人材の成果が事業成果に結びつかない点にあります。

具体的には、DSが構築した分析モデルが事業判断に使われない、SEが開発したシステムが現場で活用されない、CSのセキュリティ施策が事業推進を阻害する、といった現象が生じます。これは数千万円〜数億円のDX投資の浪費につながります。

BA育成・確保への投資ROI

BA1名の年間人件費・育成コストを1,500〜2,000万円とした場合、その経済価値は以下の観点で評価されます。

  • DXプロジェクト全体の成功率向上(10〜30%の改善)
  • 専門人材(DS・SE・CS)の成果の事業価値転換
  • 部門間調整工数の削減
  • 経営判断の品質向上

BA1名あたりの経済価値は年間数億円規模となるケースもあり、投資回収期間は2〜3年が標準的です。


コンサル支援と事業会社実務の両側面から得た知見:人材ポートフォリオ設計の実装

5職種(+DM)の人材ポートフォリオ設計は、多くの企業で「フレームワークは理解できるが、自社にどう適用するかが見えない」状態となります。ConStepを運営する株式会社Ballistaが、人材ポートフォリオ設計において提供する観点を整理します。

Ballistaの実証:BA中核の組織設計を自社で実践

Ballistaは、戦略系・大手コンサルファーム(Strategy&/Monitor Deloitte/PwC/Deloitte/Accenture/EY Parthenon等)出身者が結集したプロフェッショナルファームです。コンサルティング業務の暗黙知を組織として言語化・形式知化・体系化するプロジェクトを、創業期から急成長フェーズで自社で完遂しました。

この自社実証の経験は、「BA能力を中核に置いた組織設計」と本質的に重なります。コンサルタントに求められる能力(戦略思考、リサーチ、プロジェクト推進、ステークホルダーマネジメント、ROI設計)は、BA13スキルとほぼ同義です。だからこそ、BA育成・採用・配置の設計において、コンサルファーム発の実証ノウハウを提供できます。

代表中川の二面経験:人材ポートフォリオ設計の苦しみを一人称で知る

DX推進組織・人事部門で人材ポートフォリオ設計を担う方が、ConStepおよびBallistaを判断する際、代表中川の経歴の二面性は判断材料となります。中川は、コンサルタントとして大企業のDX推進組織設計案件を支援する立場で、5職種の比率設計・採用優先順位設計・既存人材の再配置論点を、外部支援者として俯瞰的に観察してきました。

それと並行して、中川自身が事業会社の現場で実務を担う立場で、人材ポートフォリオ設計の苦しみ――役員からの「データサイエンティストを30人採れ」という単一職種偏重の指示、現場からの「BAって結局何やる人ですか」という曖昧さへの不満、採用市場でのBA人材の希少性、既存IT部門との役割分担調整の難しさ――を当事者として一人称で経験しています。

この二面的視座から、人材ポートフォリオ設計の現実的な進め方を提供できます。フレームワーク通りの比率設計ではなく、自社のDXフェーズと既存人材構成を踏まえた段階的なポートフォリオ移行設計が、運用負荷と経営合意の両立に効きます。

BA育成先行の人材戦略

Ballistaが多くの大企業案件で観察してきた共通パターンは、「BA育成を後回しにした企業ほどDX投資の浪費に至る」というものです。技術系職種(DS・SE)の採用を先行させても、事業シナリオを設計する人材が不在では、専門人材の成果が事業価値に結びつきません。

ConStepは、BA13スキル育成に対応するカリキュラムを提供しており、コンサル業界で実証されたBA育成メソッドを、御社のDX推進組織で活用できる構造となっています。御社が5職種ポートフォリオ設計を進める際、BA育成を起点とした人材戦略が、投資回収の観点で最も推奨されます。


よくある質問(FAQ)

Q. 自社のDXフェーズが分からない場合、どう判断すればよいですか?

A. 簡易判定の3つの観点があります。第一に、業務データがどの程度デジタル化されているか(紙・Excel中心ならデジタイゼーション段階)。第二に、業務プロセスがどの程度デジタル化されているか(部門ごとに業務システムは入っているがサイロ化している段階はデジタライゼーション)。第三に、顧客への提供価値がデジタルでどの程度変容しているか(新サービス・新事業がデジタル起点で創出されている段階はDX)。多くの大企業は、デジタライゼーション段階の途中で停滞しているケースが多く、その場合はBAの確保と既存事業変革の推進が優先課題となります。

Q. データマネジメント(DM)類型は、データサイエンティスト(DS)と何が違いますか?

A. DSは「データの分析と活用」を担い、統計・機械学習・データ分析が中核能力です。DMは「データの整備と維持」を担い、データ基盤設計・データ品質管理・データガバナンスが中核能力です。両者は対立ではなく補完関係で、DSが効果を発揮するためにはDMが整備したデータ基盤が必要、という前提構造があります。データ活用本格化を目指す企業は、両類型の確保が必要となります。

Q. BAは社内人材で育成できますか、それとも外部採用が現実的ですか?

A. ハイブリッドが現実的です。BA人材は採用市場でも希少なため、外部採用だけでの確保は難しい一方、社内人材ゼロからの育成も時間がかかります。多くの大企業では、社内の戦略系・企画系・新規事業系の人材を起点にBA育成を進めながら、外部から経験者を一定数採用して即戦力化する組み合わせが採用されています。育成期間は社内人材で1〜2年、新卒・若手で2〜3年が標準です。

Q. 5職種すべてを社内で揃える必要がありますか?

A. 必ずしも必要ありません。BAは社内に持つ必要が高い職種ですが、DS・SE・CSは外部パートナーとの連携で代替可能な領域も多くあります。DMは社内のIT部門・データ部門との連動で対応するケースも標準的です。「社内で持つべき職種」と「外部連携で機能させる職種」を明確に分けた人材戦略が、効率的なポートフォリオ設計につながります。

Q. DXリテラシー標準とDX推進スキル標準は、どう使い分けますか?

A. DXリテラシー標準は全ビジネスパーソン(一般社員・管理職含む)向けの基礎リテラシーであり、新入社員研修・管理職研修・営業研修などに組み込む対象です。DX推進スキル標準(5職種+DM)は、DX推進専門人材向けの要件であり、選抜型のDX人材育成プログラム・採用要件として活用します。両者は対象範囲が異なるため、別個のプログラム設計が必要です。


まとめ

  • DSSのDX推進スキル標準は、ver1.0で5類型(BA・DS・DD・SE・CS)、ver2.0で6類型(5類型+DM)を定義しています。
  • 5職種は対立関係ではなく補完関係にあり、BAが「上流の指揮者」、DD・DS・SE・CSが「専門領域の実行者」という連携構造が標準的です。
  • 自社の人材ポートフォリオ設計は、DXフェーズ・事業戦略・既存人材構成の3観点で判断します。
  • 多くの企業の失敗パターンは、技術系職種(DS・SE)の採用を先行させてBAを後回しにすることで、専門人材の成果が事業価値に結びつかない構造に陥ることです。
  • BA育成先行の人材戦略が、5職種ポートフォリオ設計のROIを最大化する起点となります。

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監修:株式会社Ballista 現役コンサルタント陣(Monitor Deloitte/Strategy&/Deloitte/PwC/Accenture等出身)
出典:経済産業省「デジタルスキル標準(DSS)」ver2.0/IPA「DX推進スキル標準」関連資料
最終更新日:2026年5月26日

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